現状に留まらず、更に精進することが必要である』永田先生



◆指導書p87~練功十八法動作の呼吸生理学的検証◆

(p110より)(6)練功のストレッチング体操による腰痛・肩こりの予防

 腰痛・肩こりの原因は、整形外科的な障害・疾病の場合を除き、固定した一定の姿勢を長時間保持し使いすぎた結果と思われます。これは、その部位の血液循環が悪くなった状態で、筋や筋膜性の疲労と同じでしょう。これを緩和するためには、例えば、50分の作業において10分程度の「積極的な休息」を取り入れる 【指導書定価3,500円】 ことが、疲労回復につながるようです。これがストレッチングです。      

「積極的な休息」とは軽い体操の実行であって、腰痛の場合は、体幹部の前・後屈のストレッチングで、さらに側屈・回旋運動を加えていきます。

 肩こりや五十肩の場合には、首の回転運動、肩関節の挙上と上肢の前後方向のストレッチングが有効です。筋肉や筋膜の血行をよくするためには、日頃から背・腹筋や胸鎖乳頭筋・靱帯の強化体操を行なうように心がけると同時に、仕事の合間にストレッチングを導入します。このストレッチング体操が沢山含まれているのが、練功十八法です。(永田先生)         (2021/01/23)

 

 


◆練功十八法の科学的な検証◆

p107(脳波から見た周波数分析)

◎練功を体験して気がつくのは、気分がいい恍惚状態に

 なる場合があります。普段の生活ではあまり味わった

 ことのないタイプの快感が伴ってきます。

 脳神経活動が日常とは違う超越した高度の安静状態に

 入ったのかもしれません。

 練功を繰り返して練習し続けると、例外なくこの入静

 状態「極度な快感」になります。       (2019/12/27)

 

 

 


◆2006年3月 練功動作中の効果を専門測定器を使って

       検査している様子◆

◎熟練者と一般の人との脳波の違いなど他が測定されている。

◎指導書p87~練功十八法動作の呼吸生理学的検証

 第1節・練功十八法の実験方法

 第2節・実験結果

 第3節・練功十八法の運動生理学的な考察と健康づくり

 第4節・科学的実験のまとめ

 

◆2015年 練功十八法 動作指導教本 発行

◎販売はされておりません。永田先生中心に理事の皆さま、

 講師の方々のご協力により練功のメカニズムが詳しく載せられ

                た素晴らしい練功動作の指導内容・教本です。

 


呼吸の体操『息き息き長寿体操』

 東洋諸国における健康体操の特徴は、すべてが呼吸の仕方であり、息を吐くこと(呼気)を重視したものが多い。四肢の動きは呼気を長く続けるのを助け、より多くの息を吐くことを強調した。体操の動きによって呼気促進に繋がったていたようである。今回、こうした呼吸法を重視している「練功十八法」「導引術」(DVD 1800円) 「五禽戯」「五段錦」などの中国式スローテンポ型の基本動作に着目して11種類の基本的な動きをピックアップし、アレンジして『息き息き長寿体操』と命名して開発・編集した。これはあくまでも呼吸法を重視した体操である。いつでも、どこでも、だれでも、自由に簡単に実施できる特徴を持っている。そのため高齢者用の健康長寿体操としての条件を満たした動作と考えられる。そして生活の中で運動生活習慣化される可能性を持っている。

                             (永田先生 2007年「現代養生法」p87)

◎高齢者だけではなく誰でも、不安で息苦しい時、癒やしの曲の中で、1人だけで9分間、深呼吸しながら手足を動かせるこの体操、腕を伸ばしたとき、息がたくさん入ってくるのがわかります。

YouTubeでも見られますが、DVDを利用して、TVの大画面で曲にどっぷり浸かっての体操をおすすめします。集中して、継続できたとき、その良さが理解できるかな?(2022/02/17)



永田晟の伝統医学 会報第43号(2018年6月1日発行)

(原稿協力:山崎、辻、今川、國分、管根、澤田、金森)

      *日々の教室での指導において、動作の特徴も理解して、指導できて

        いるか?先輩方の貴重な資料をHPに載せ、必要なところをいつでも

        確認出来るようにしてみた。難しい点は本部へ質問。(2019/12/13)



《 練功動作の特徴 》

§1.練功十八法(前段後段益気功)の特徴と健康づくり

  練功動作の理工学的・整形外科的な理解を通じた知識の獲得、自習の差が指導者レベルの差・

 能力を生み出します。

 ◎Kinesiology・Biomechanism・Activities  Sciences・Work  Sciences の視点を持ち、じっくりと学習することで、あらゆる動きの比較を通じた練功の良さを再確認します。日常生活の動作によって、反射を意識機能に変えて、認知症の予防を練功に求めます。さらに高齢者用の認知症予防に役立てます。以下に練功十八法の特徴を、4項目示します。

 

(1)反動動作を使わない~慣性力が生じる

  練功動作は「isokinetic (等速性運動)exercise」でストレッチ(伸展)を主に使っています

(2)最大限の動作を行なう~移動範囲の最大・終局までの動作を行なう。

  日頃使わない最大の動作を行なう。8割や7割の余裕動作ではないことを知ることが大切です

(3)歳を取らない~萎縮・退行を防ぐように動きを刺激する。

  ①ボケの予防、 ②認知症(疾病)予防、 ③高齢者のストレスの解消

(4)人間としての日常生活に必要な動作が含まれています。

  ・馬歩姿勢(股関節と膝関節の屈曲)

  ・身体を回す(脊柱のずれ)

  ・万歳動作(肩関節の伸展)

  ・呼吸運動(自律神経系の活性化)と腹式呼吸の独立性

  ・ツボ・マッサージ(癒やしとリラックス)とリンパ系の活性化

  ・歩行運動のような軽い強度の運動の連続性

  

 



§Ⅱ、前段の動作要点(DVDでは白い衣装)

 練功十八法の前段は、体幹部位・上肢・下肢のストレッチ運動が含まれています。首、肩、

 背部、腰、膝、脚、足などの筋肉、関節、靱帯を引き伸ばしていきます。頭部から足先まで

 順番にストレッチしていきます。

 日常生活や作業によって引き起こされる、こり(硬直)や違和感の予防、回復に役立つ運動なので、健康づくりとして習慣化させましょう。前段は、誰でも出来る簡易な体操パターンで、

運動の基本的な要素が多く含まれています。

後段・益気功にも関連する注意点が多くありますので、以下に述べたいと思います。

 

①姿勢

  脊柱を基本にして、姿勢を真っ直ぐにして行います。

 両手を前後、左右に動かすとき、脊柱を中心にして、動作を行ないます。

 上下方向の動作は、脊柱を真っ直ぐにして、丹田を中心に上下に引き合うように行ないます。

 

②視線

  視線の高さと動きに注意して行います。

 練功十八法の動作では、いくつかの節(前段第4節・益気功第12節)を除いては、視線が水平

 の高さから下方に下がることはありません。常に視線を意識することによって、正しい姿勢で

 運動を行なうことが出来ます。特に初心者は、やや伏し目がちで運動を行なっていることが

 多いので、注意することが大切です。

  視線の動きについて、練功十八法は上を見る動作があります。上方を見ようと思った瞬間に

 視線が先に動いてしまいがちなので、当然バランスも崩してしまいます。視線をゆっくり

 動かすことで、安定した動作を行なうことが出来ます。(視線も、等速性に動かす。)

 

③骨・筋肉・関節などの身体構造

  人間は、おおよそ、206の骨(生まれた時は約400)、600の筋肉(骨格筋は400)、260の

 関節があり、骨は関節でつながり、筋肉が骨と関節を動かします。

 運動・動作の指導を行なうときに、それらの構造や仕組みを知って理解すると、より効果的

 な習熟と指導を行なうことが出来ます。

  また、神経系や呼吸のメカニズムを知ることも大切です。協会で発行している

 『動作指導教本』には、前段、後段、益気功の54の動作が、詳しく解説されていますので、

  指導の手引きとして、『指導書』と共に活用してください。

 

④等速性(アイソキネティック)

  運動には代表的なものとして、等張性運動(アイソトニック)、等尺性運動(アイソメトリ

 ック)、等速性運動(アイソキネティック)の3つがあります。どんな運動にもその3つの

 側面がありますが、練功十八法は、その中の等速性が強調された運動です。

  等速性の運動とは、筋肉と関節を動かすスピード、変位量が変わらない運動のことで、

 筋肉の伸び縮みの速度が一定です。関節や筋肉への負担が少なく、筋肉を傷つけにくいという

 特徴があり、筋肉の柔軟性や関節の可動域の維持に役立ちます。そのメカニズムがリハビリテ

 ーション用のマシーンに応用されています。反動を使わず、同じスピードで運動をおこなう

 ことが、練功十八法の特徴です。

 

⑤上肢の回旋・挙上と肩関節・肩甲骨の伸展(第2、3,4,5,6,16,17節)

  現代病といわれるスマートフォン頚や肩こりを予防して、特に肩のストレッチで肩関節の

 硬直や痙縮・固縮を防ぎます。上腕肩甲関節の解剖機能や「スローイング・ショルダー」の

 関節窩(かんせつわ)と骨頭の深さ・浅さのレベルを知り、肩関節の脱臼を未然に防ぎ、有機的な

 方向性を理解して、動作指導に役立てます。

 

⑥身体を回す、捻る、倒す(脊柱のずれ)(第7,8,9,10,12,14,15節)

  練功十八法には、身体を回す動作が多く取り入れられています。特に前段は、腰や膝を回す

 運動もあります。腰椎・胸椎・頚椎の各関節の特徴と動きの仕組みを知り、理解して、上肢

 腰部、膝の回転とひねり、倒す動作を指導します。股関節の寛骨の外転・内転筋群やトレンデ

 レンブルグ歩行やモンロー・ウォーキングの歪みを知って、スマートな動作を指導します。

 

⑦日常の歩行・歩行動作のような軽い強度の運動(第18節)

  練功十八法の動作の特徴の一つに、歩行運動が組み込まれています。特に後ろに下がる動作は

 太極拳では見られますが、運動としては他にあまり見受けられません。

  ちなみに、この後ろ歩きの動きは、類人猿には出来ません。下肢・骨盤・脊柱が直立する人間

 だけが可能な動作で、足、脚を後ろに出すときに使われる大臀筋やハムストリングが、姿勢維持

 に大切な役割を持つのです。

 *走行・歩行も含めた重心移動の重視

 *歩行のバランス移動のコツを知る(小脳)

 *動作力学の基本を確認すると同時に、走行時の片足の支持の強調

 これらを習得することで、姿勢の保持、特に高齢者の日常生活動作の萎縮・退行を予防します。

 

「前段」各動作の特長一覧表

分節

動作名称 予防効果のある障害・痛み 主たる筋肉・関節強化部位 METS
 1節 頸項争力  頸椎病、寝違えによる痛み   僧帽筋・首関節

 1.3

2節 左右開弓  首、肩、背中のコリと痛み  菱形筋・肩関節

1.5

3節 双手伸展  手や肩の上方伸展障害  棘上筋・三角筋

1.6

4節 開闊胸懐  首のコリと痛み、肩関節の機能障害  烏口腕筋・肩関節

1.6

5節 展翅飛翔  五十肩  肩関節

2.1

6節

鉄臂単堤

 肩関節の後ろ捻り障害

 棘下筋・小円筋・大円筋

 広背筋・肩関節

2.4

7節

双手托天

 脊柱側弯、腰、背中の筋肉の硬直

 腰の筋肉・脊柱

2.3

8節

転腰推掌

 腰の軟組織の疲労損傷

 多裂筋・腰の筋肉・腰椎

2.2

9節

叉腰旋転

 慢性腰痛、ぎっくり腰

 腰の筋肉・第4・5腰椎

2.3

10節

転臂弯腰

 腰のコリ、痛み

仙棘筋・腰の筋肉・両足の

後ろ側の筋肉

2.7

11節

弓歩挿掌

 足腰の痛み

 足腰の筋肉・腰椎

3.1

12節

双手攀足

 足腰の軟組織の疲労損傷

 足腰の筋肉・靱帯

3.4

13節

左右転膝

 膝の運動障害、痛み

大腿四頭筋・膝関節・踝

3.5

14節

仆歩転体

 膝の運動障害・痛み

大腿四頭筋・内転筋・

 膝関節・坐骨神経

3.5

 

15節

俯蹲伸腿

 坐骨神経痛、脊柱側弯

大臀筋・両足後ろ側の筋肉

3.5

16節

扶膝托掌

 足の筋肉の萎縮、無力

大腿四頭筋・両足の筋肉

3.0

17節

胸前抱膝

お尻や足のコリと痛み、屈伸機能障害

 大臀筋・股関節

2.4

18節

雄関漫歩

足の筋肉や関節のコリと痛み、

運動障害

下肢筋肉・関節

1.6

 

 



§Ⅲ、後段の動作要点(DVDでは黄色い衣装)

  練功十八法の後段は、下肢を中心にした運動で、関節を緩め内臓の緊張をほぐすストレッチ

 効果の高い、バランス(平行機能)中心の健康運動です。

  高齢になると足腰が弱くなり、転倒事故が多くなります。転倒予防には、運動による筋力と

 バランス能力の強化が必要です。バランスを保ちながら動作を行なうことによって、感覚神経系

 の刺激や、血流改善効果も望めます。後段で、いろいろな歩幅や歩形・バランス機能を習得して

 事故防止や手足の関節疾患を予防します。

  また運動動作の中に、ツボ・マッサージを取り入れているのは、練功十八法の特徴です。

 顔・お腹・頭などのマッサージ(グルーミング)動作で、血行促進にも役立ちます。

 

①歩幅

  後段は、両足の間隔(立正・小開歩・中開歩・大開歩)の開閉の動きが多くあります。

 足幅を正確に取るようにします。つま先は常に正面に向けます。基本の小開歩は、両腕の外側

 一番太いところを、真っ直ぐに下方に下ろした位置に両足の外側が来るように、足幅を決めます

 (小開歩)。これを基準として、1.5倍幅の中開歩、2倍幅の大開歩の、足幅になります。

 

②馬歩(第1,8,11節)

  後段には、馬歩の姿勢が多く出てきます。膝の動きを膝関節の"点”と”線”の動作機構から考え

 て、馬歩姿勢の保持と大腿部と下腿部の筋群をトレーニングします。二関節筋の機構と関連から

 見た場合、膝関節の屈曲と股関節の屈曲を考えます。

  馬歩姿勢は、馬の背に騎乗したスタイルです。鐙(あぶみ)に爪先を前にして両足を置き、

 股関節をアーチ状に開きながら、膝を外に張るようにして、膝頭は前方に向けます。膝が爪先

 から前に出すぎると、重心が前に移動して、膝関節に負荷がかかって膝を痛めやすくなりますの

 で注意します。

 


【馬歩】指導教本p240

効果ー自律神経のバランスを整える

馬歩⇒股関節を刺激⇒骨盤・内臓が整えられる⇒副交感神経が優位になる。

①爪先は前。膝が爪先より出ない。

(膝が前に出ると重心が前に移り、膝関節に負荷がかかる。)

②身体を垂直にして腰を下ろすと膝は出ない。

③運動効果が一番上がるのが、腰を下ろす角度、135°。

          ④頸椎を伸ばすようにする。

          ⑤重心は踵の上。臀部を踵より後ろに引くようにする。

          ⑥爪先は床を押さえる。(姿勢が不安定になるので)

          ⑦膝は外側に張る。(内側に入ると膝をいためやすい)

          ⑧馬にまたがっているイメージ。股間をアーチ状に開く。

 


③歇歩(けっぽ)(第2節)

  歇歩の歇には、休息、休む、停止するという意味があります。この歩型は、練功十八法の54

 の動作の中で、後段第2節だけです。

  上体を正面から真後ろに向けるとき、股関節、腰、胸、肩を意識して、上体をゆっくり回して

 腰を落として歇歩の姿勢をとります。歇歩の姿勢になったとき、重心の位置に注意してバランス

 を保ちます。

 

 

④バランス(第2,5,6,16,18節)

  前段の第18節は、人間の歩行を模した動作です。歩行は、瞬時片足の状態になるので、日常

 生活では常に片足のバランスを要求されます。後段は、片足で行なう動作が多く、バランスを

 要求されます。軸足にしっかりと重心を移動してから、次の動作を行ないます。視線もゆっくり

 と上げていきます。練功十八法の後段でバランスを取ることを習得することで、姿勢の維持と

 転倒予防につながります。

 

⑤ツボ・マッサージの運動(第13,14,15節)

  後段の動作には、他の体操・運動にはみられないツボ・マッサージの動作(顔、頭部、腹部)

 があります。ツボの位置を正確に把握して、程よく押圧することによって、癒やしとリラックス

 効果・リンパ系の活性化が考えられます。

 

「後段」 各動作の特長一覧表

分節

動作名称

予防効果のある障害・痛み 主たる筋肉・関節強化部位 METS

 1節

馬歩推掌 膝関節の痛み、慢性リウマチ性関節炎

  大腿四頭筋・股関節・

 手足の関節

 2.2

 

2節

歇歩推掌  足の関節の痛み

 股関節・足の関節

2.7

3節

上下疎通  手足の関節の痛み

 手足の関節・筋肉

3.0

4節

転体回頭  手足の関節の痛み、腰の痛み

 手足の関節・筋肉・腰

3.1

5節

左右蹬腿  足の関節の痛み

 足の関節・筋肉

3.0

6節

四面踢○

 足の運動機能障害

 股関節・足の関節

2.7

7節

四面推掌

 手首、指の腱鞘炎

手首の甲側筋腱・

手首・指関節

2.2

 

8節

拉弓射箭

 肘、手首、手の指の腱鞘炎

手の掌側の筋腱・肘・手首

指関節

2.2

9節

伸臂転腕

 手首の腱鞘炎

 手首関節・肩関節

2.2

10節

前後展臂

 テニス肘

肩・肘・腕・掌・指の筋腱

2.2

11節

馬歩冲拳

 手足の筋力低下

上腕三頭筋・上腕二頭筋

肘・腕の筋腱

2.1

12節

松臂転腰

 腰、腕の筋肉疲労

 腰・腕の筋肉

1.9

13節

摩面揉谷

 聴力低下、目のかすみ、浅い眠り

 頭・顔・手の甲のツボ

1.5

14節

按摩胸腹

胃痛、腹痛、消化不良、便秘、生理痛

 上腹部・下腹部のツボ

1.4

15節

梳頭転腰

 頭痛、頭の重さ

 頭のツボ

1.4

16節

托掌提膝

 胃腸の消化不良

 胸と腹の筋肉・横隔膜

1.8

17節

転腰俯仰

 腰のコリと痛み、虚弱体質

 腰と腹の筋肉

1.9

18節

展臂舒胸

 心肺機能低下、疲労

 胸・心肺

1.7

 

 



§Ⅳ.益気功の動作要点(DVDでは赤い衣装)

  練功十八法の益気功は、動作名称にすべて”気”という文字が使われていることからも知るよう

 に、呼吸を中心とした体操です。口から長く息を吐き続けて、口から吐く息(呼気)を中心に

 運動して、心の癒やし、精神的な安定性を引き起こし、亢奮した気持ちを鎮めていきます。

 横隔膜(筋肉)から脳に向かって多くの信号が、発射されています。

  呼吸器疾患の予防、喘息、肺気腫、気管支炎、鼻詰まり、咳などの予防・回復にも有効で、

 リラックス効果を高めます。後段と同様に、ツボ・マッサージの動作運動も含まれています。

 以下に益気功の特徴をまとめます。

 

 

①腹式呼吸(第1,2,3,4,10,11,12,13,14,15,16,17,18節)

  腹式呼吸は、腹部、丹田を圧迫して横隔膜を挙上することにより腹部の圧力を高め、多くの

 呼息を吐き出す方法です。丹田呼吸・横隔膜呼吸・意識呼吸ともいいます。副交感神経の働きを

 高め、内臓諸器官の消化・吸収・排泄・循環を促進します。便秘・冷え性の改善・ストレスの

 緩和などにも役立ちます。身体の前屈と後屈に合わせて呼吸を行なうことで、より息を吐きやす

 くなります。練功動作中は、動作に対応して吐息・吸息を行ないます。肺の構造(炭酸ガス分

 圧)と横隔膜(物理的な動き)の機能を勉強して、意識的な腹式呼吸のメリットを、利用したい

 ものです。

 

②ツボ・マッサージの運動(第5,6,7,8,9節)

  後段には、顔やお腹のマッサージの運動動作がありました。益気功のマッサージは、顔、体幹

 の前面・後面のツボ、マッサージの運動動作があります。益気功で使用するツボの多くは、

 呼吸器系に関連があり、呼吸器疾患の予防改善に効果があります。ツボの位置を正確に把握して

 呼吸を意識して、号令に合わせて押圧します。協会出版の『マッサージと「癒やし」のツボ』の

 本(冊子)にも、益気功で使用するツボの位置や効能が書かれていますので、併せて勉強して

 ください。

  横隔膜は、呼吸をするときに一番大切な筋肉(横紋筋・不随意筋)です。横隔膜は息を吸った

 ときに下方に下がり、息を吐くと上方に持ち上がります。横隔膜が下方に下がることで、肺が膨

 らんで酸素を取り込むことができます。息を吐くと横隔膜が上方に持ち上がってきて息を吐き出

 し易くなります。

  動作に合わせてしっかり呼吸することで、不随意筋である横隔膜をストレッチします。

 呼吸は、横隔膜のマッサージをしているともいえるのではないでしょうか。このことから考えて

 みても、益気功はとても素晴らしい運動だと思います。            以上       (2019/12/19)

 

 

「益気功」 各動作の特長一覧表

分節

動作名称

予防効果のある障害・痛み 主たる筋肉・関節強化部位 METS
1節  自然呼気 呼吸機能低下 横隔膜

 1.4

2節 呼吸練気 心肺機能低下 横隔膜・腕

1.4

3節 亮翅吸気 呼吸機能低下 横隔膜・胸と腹

1.7

4節 下蹲吐気 呼吸機能低下 横隔膜・胸部・足の前側

2.2

5節 按摩理気 咳、喘息 胸と腹

2.0

6節 摩面暖気 頭と顔面の血行障害、鼻づまり、風邪 顔面・頭皮

1.9

7節 擦頸平気 頚椎病、寝違え

1.7

8節 推頸緩気 喘息、咳 首のうしろ

1.6

9節 拍胸松気 喘息、咳 胸と背中

1.8

10節 提臂寛気 呼吸機能低下、内臓不調 胸・横隔膜

2.1

11節 開胸順気 呼吸機能低下、気血の滞り 横隔膜・腕と足腰

2.3

12節 看手運気 呼吸機能低下、気血の滞り 胸腹部・腰腿部

2.2

13節 上下通気 呼吸機能低下、気血の滞り 胸腹部・四肢・腰

2.4

14節 転腰舒気 呼吸機能低下、精力減退、腰痛

横隔膜・胸腹部・首・腰・

腕・手首

2.5

15節 俯仰補気 腰痛、気力減退、腎機能低下

首・胸・腹・肩・腰

2.3

16節 仆歩壮気

四肢関節障害、呼吸機能低下、

病気抵抗力低下

大腿四頭筋・内転筋・

横隔膜・首・四肢

2.1

17節 鍛練正気

肺活量低下、新陳代謝低下

大腿四頭筋・横隔膜・首

肩・腰腿部

2.2

18節 踏歩行気

呼吸機能低下、脚力低下

大腿四頭筋・胸腹部

2.7

 

◆動作は指先、爪先まで気を入れて正確に!◆